フィラリア予防について
今回はフィラリア予防について解説します。
犬にとってフィラリア予防が重要なことはみなさんご存知だと思います。
しかし、いつからいつまで予防すべきなのか、どの製品が良いのかなど色々気になることは多いのではないでしょうか。
また、近年では猫に対してのフィラリア予防の重要性も唱えられています。
この辺りの疑問を解決していただけるよう、当院の方針も含めて以下で解説します。
フィラリアとは
フィラリアとは寄生虫の一種です。
蚊を介して移ることが知られており、主に犬の体内で増殖しやすい性質を持っています。
体内に侵入したフィラリアは成長しながら心臓へと移動し、心臓に到達後、心臓で生活をするようになります。
そのため、フィラリアに寄生された動物は心臓が悪くなってしまいます。
フィラリア検査とは
フィラリアに寄生されているかどうかは血液検査で確認を行います。
当院では検査キットを用いたフィラリア抗原検査を行なっており、過去行われていた顕微鏡でフィラリア寄生を調べる検査と比較して、より正確な診断を下すことができます。
フィラリアに寄生されている状態で、フィラリアの予防薬を投与した場合、大量のフィラリアが死滅することによる体調不良が起きることがあります。
そのため、フィラリア予防薬の投薬前には血液検査を行う必要があります。
フィラリア予防の方法
フィラリア予防の方法はある程度確立されてはいますが、温暖化の影響、製剤の進歩などにより、時代とともに変化しています。
フィラリア予防時期、製剤の詳細に分けて以下で解説します。
フィラリアの予防時期
フィラリアは蚊によって移るので、蚊の活動の影響を受けます。
蚊が活動できる温度帯は決まっており、またフィラリア自体も温度による影響を受けます。
そのため、気温をもとにフィラリアの感染時期は計算でき、大阪の気候では4月から11月が感染時期と言われています。
フィラリアの予防薬は、感染した可能性があるタイミングから少し遅れての投与が推奨されるので、予防薬の投与時期は5〜12月となります。
後述する製品にもよりますが、ほとんどの製品が月1回の投与なので、計8回投薬を行うことになります。
しかし、上記のような理論がある一方で、米国犬糸状虫学会(アメリカにあるフィラリアの研究団体)からは年中の予防が推奨されています。
これは、地球温暖化の影響や都市部では気温が低くとも蚊が散発的に発生してしまうことを考えると、上記の理論が必ずしも完璧ではないためです。
製剤の詳細
現在最も使われているフィラリア予防製品は、オールインワンタイプと呼ばれる製剤です。
オールインワンタイプの製品は1錠で、フィラリアに加え、ノミ・ダニ、消化管内寄生虫など多くの寄生虫に効果があります。
安全性も高く、嗜好性が高い点も特徴です。
他のフィラリア予防薬は、おやつタイプ、錠剤、スポット剤(垂らすタイプ)、注射タイプに分けられます。
おやつタイプはオールインワンタイプが出る前に主流であった製品で、フィラリアしか予防しないため安価で入手できます。
錠剤タイプは安価であること、味がついている薬が苦手な子に飲ませやすいことがメリットです。
スポット剤は口から投与ではなく垂らすだけなので、投薬が苦手な子におすすめです。
注射タイプは年に1回注射で投与すれば12ヶ月効果が持続する製品です。メリットは投薬の忘れがないこと、投薬が苦手でも注射で投与できることです。
フィラリアの治療
日本国内において、フィラリア症の治療は難しく長い時間がかかります。
フィラリア症の治療は様々ですが、外科的にフィラリアを取り除く器具は生産が中止されており、治療薬とされているお薬が日本国内では手に入りません。
ほとんどの動物病院で可能な治療は、予防薬とドキシサイクリンというお薬を使用し、成虫の寿命が来るのを待つ治療です。
治療には短い子で数ヶ月を要します。
そのため、フィラリア症は予防が非常に重要な病気です。
猫のフィラリア
フィラリアは犬の飼い主の方には認知度が高く、予防率も高いです。
しかし、実は猫にも寄生することがあり、体調不良を引き起こします。
猫のフィラリア症の問題点は診断が難しいことです。
犬では診断キットを用いての診断が可能ですが、猫では診断キットの正確性が乏しく、診断は主に心臓の超音波検査で虫体を見つけることになります。
また猫の症状は様々で、症状から直接フィラリア感染を疑うことが難しいこともあります。
そのため、犬と同様に予防が最も大事と言われています。
当院のフィラリア予防
上記の内容を踏まえて、当院でのフィラリア予防について以下にまとめます。
フィラリアの予防期間
フィラリアの感染リスク、治療の難しさ、ノミ・ダニの問題などから、オールインワン製剤での年中予防をおすすめします。
費用がネックになる場合や投薬が困難な場合は、5〜12月までの8ヶ月間の予防をおすすめします。
(以前から4月スタートで、そのままが良いという方は、4〜12月で特に問題ありません)
8ヶ月間の予防の場合、12月の予防が特に重要です(もし感染した場合、1〜4月でフィラリアが成長するため)。
おすすめの予防薬
オールインワン製剤を1番におすすめします。
メリットは様々で、1錠で完結するので楽、世代も新しく予防効果が高い、安全性も高いなどが挙げられます。
デメリットはフィラリアのみの予防薬と比較し、費用面での負担が大きくなる点です。
ただ、フィラリアのみの予防薬にノミ・ダニの予防薬を加えると、あまり費用負担は変わらなくなります。
フィラリア検査について
8ヶ月間のフィラリア予防の方、昨年度の投薬に不安がある方は、今年度のフィラリア予防薬を飲ませる前にフィラリア検査を受けてください。
オールインワン製剤や注射タイプの予防薬で年中の予防を行なっている方に関しては、投薬に失敗していない限りフィラリアに感染することはないはずです。
そのため、確実に投薬を行えた実感があり、万が一のフィラリア感染による投薬後の体調不良のリスクを許容できる場合、フィラリア検査を行わないという選択肢もありだと考えています。
また、年中予防を行なっているけれどもフィラリア感染が気になるという方については、3〜5月の最も動物病院が混み合う期間を避けて、健康診断のついでにチェックすることをおすすめします。
まとめ
フィラリアは有名な病気ですが、時代の変化などの影響を受け様々な意見があります。
年中予防しておくことが体にとって一番なのは間違いありませんが、各ご家庭考え方は様々だと思います。
その子にとって一番良い予防法を一緒に考えていければと思っておりますので、何か気になることがあればお気軽にお尋ねください。