猫のワクチン接種について
猫のワクチンは色々な種類があり、打ち方も病院により少しばらつきがあります。
今回はワクチンの種類と当院でのワクチン接種について解説します。
猫のワクチンの種類
日本国内で流通しているワクチンは様々ですが、3種混合ワクチン、4種混合ワクチン、5種混合ワクチン、FIVワクチン(猫エイズ)に分類されます。
以下は各種ワクチンについての詳細です。
3種混合ワクチン
ほとんどの子が接種している基本的なワクチンです。
含まれているワクチンは、猫パルボウイルス感染症、猫ヘルペスウイルス感染症、猫カリシウイルス感染症です。
猫パルボウイルスに関しては発症予防が期待できますが、ヘルペスとカリシウイルス感染症はワクチン接種をしていても発症することがあります。
ではワクチンが無駄かと言うとそうではなく、発症時に軽い症状で済むことが知られています。
4種混合ワクチン
3種混合ワクチンに猫白血病ウイルス感染症ワクチンを加えた製品です。
基本的に接種の必要はありませんが、以下のような場合には接種を検討します。
・同居猫が猫白血病ウイルスを持っている場合
・外に出ていってしまう場合
5種混合ワクチン
4種混合ワクチンに猫クラミジア感染症ワクチンを加えた製品です。
当院に在庫はありませんが、以下のような場合は接種についてご相談ください。
・外に出ていってしまい頻繁に結膜炎になる
・多頭飼育をしており、結膜炎が多発している場合
FIVワクチン
猫エイズに対するワクチンですが、ほとんど接種することはありません。
家の子が猫エイズに感染しており、喧嘩のリスクがある場合のみ、接種を検討します。
猫のワクチンはいつ接種すべきなのか
猫のワクチンをいつ接種すべきなのかは、議論の分かれるポイントです。
以下で詳しく解説します。
子猫の場合
子猫のワクチン接種は、2回接種と3回接種で意見が分かれています。
WSAVAと呼ばれる世界的な団体の指針としては、大体2、3、4ヶ月で計3回接種を推奨しています。
一方、国内のワクチンメーカーは2ヶ月以上の子に計2回の接種を推奨しています。
なので、病院ごとに少し方針の違いが出ることがあります。
当院では基本的に2、3ヶ月での計2回接種を基本とし、希望があれば3回目を接種します。
成猫の場合
子猫のワクチン接種から半年〜1年後に、ワクチン接種を行います。
その後は3年以上の間隔を空けて接種が望ましいとされています。
特に猫ではワクチンによるアレルギー反応以外にも、低確率ではありますが接種部位に腫瘍が発生するリスクがあります。
また、ある報告によれば、ワクチン接種により腎臓病のリスクが高まるともされています。
そのため、当院でも基本的には猫へのワクチン接種は3年以上間隔を空けることとしています。
では3年目以降どのタイミングでワクチンを接種すべきなのでしょうか?
どれほどの免疫力をその子が持っているかは、見た目上判断できません。
そのため当院では3年以上ワクチンの間隔が空いている子には、採血によるワクチン抗体価検査をおすすめします。
ワクチン抗体価検査の結果、免疫力が低ければ(抗体価が低ければ)ワクチンの再接種を行いましょう。
例外的に1年に1回のワクチン接種をおすすめする時があります。
それはペットホテルなどの利用を行う場合で、どうしてもルールとして1年に1回のワクチン接種を定めている場合が多いので、接種を行います。
完全室内飼育の猫に混合ワクチンは必要か
非常に議論の分かれるところだと思いますが、当院は必要と考えています。
もちろん抗体価が十分にある場合はワクチン接種の必要はありません。
しかし、ワクチン抗体価を調べていない、そもそもワクチンを接種したことがない場合は以下のような問題が生じます。
- ・猫を預ける必要が出た時、受け入れ先が見つからない
- ・体調がすぐれず病院に来た時に、感染リスクを抱えてしまう
- ・災害時、避難先で感染リスクを抱えてしまう
そのため、当院では完全室内飼育の子であっても、混合ワクチンの接種をおすすめします。