犬のワクチン接種について
わんちゃんに対するワクチン接種は必要不可欠なものです。
しかし、種類や接種の仕方がややこしいかもしれません。
また、最近では年1回の接種と言われていたものが、3年に1回と言われ始めたり、混乱することが多いと思います。
当院のワクチン接種について以下で解説していますので、参考になれば幸いです。
やや詳しめに解説を入れているので、結論だけ知りたいという方は、まとめまで飛ばしてください。
狂犬病ワクチン
名前の通り狂犬病を予防するワクチンです。
現在、狂犬病は日本国内で発生していません。
しかし、日本で狂犬病を蔓延させないために、飼い犬には年1回の接種が義務付けられています。
狂犬病の病気自体の解説は、以下の厚生省のページに詳しく乗っているため、そちらをご覧ください。
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10
オーナー様がよく疑問に思われるポイントを以下で解説します。
高齢だけど接種しないといけない?
すみませんが、高齢であることは狂犬病ワクチンを接種しなくて良い理由にはなりません。
ご協力よろしくお願いします。
副作用が怖いのですが…
ワクチンに副作用(副反応)がないとは言い切れません。
しかし、狂犬病ワクチンは混合ワクチンと比較して、副作用の発生率が低いことが知られています。
なので、基本的には安心して接種を受けていただければと思います。
ちなみに、平成27年に狂犬病を接種した頭数は約450万頭であり、副作用の発生は18件とされています。(1万頭に4頭くらいの確率)
過去に副作用が出たことがあるのですが、接種しなくてはいけませんか?
上記の通り副作用の発生は稀ですが、副作用が発生した場合は、次年度以降の狂犬病接種を免除できることがあります。
獣医師が発行する猶予証が必要となりますので、診察でご相談ください。
いつ接種すればいいの?
毎年4月1日〜6月30日までに接種してください。
また、4月には集合注射も行われています。
家に迎え入れた時期がこの期間でない場合は、動物病院にお問い合わせください。
ほとんどの場合、問題なく接種できます。
接種後の手続きがよくわかりません…
狂犬病ワクチンは接種したことを区や市に報告する必要があります。
自分で行う場合には、動物病院からお出しする狂犬病接種証を持って、お住まいの地域の担当窓口へ行ってください。
吹田市にお住まいの方は当院が代わりに手続きすることができます。
春に届く書類(4枚のつづりになっているもの)を持って、狂犬病接種を受けてください。
初めて狂犬病の接種を行うのですが…
狂犬病ワクチン接種を届けるにあたり、区や市へ犬の登録が必要です。
登録だけ先に行うか、狂犬病接種証を持ってお住まいの地域の担当窓口に行ってください。
吹田市にお住まいの方は、登録の代行も可能です。
しかし、今はペットショップやブリーダーさんのマイクロチップ登録が義務化されており、吹田市はマイクロチップ情報があれば登録をネット上で完結できます。
今の状況が不明な場合は、一度以下のサイトで確認をおすすめします。
https://reg.mc.env.go.jp/owner/top_user
吹田市に引っ越してきたのですが…
マイクロチップ登録済であれば、上記サイトで住所変更などを行ってください。
その反映後であれば、当院で代行手続きが可能です。
マイクロチップが入っていない場合は、吹田市の担当窓口へ狂犬病接種証を持って行き、登録の変更と接種の届けを行ってください。
混合ワクチン
色々な感染症を予防するためのワクチンです。
5種、6種、7種など種類も多く、毎年接種と言われたり、3年に1回と言われたり難しいと思います。
種類がなぜ色々あるのか、打ち方になぜ違いが出るのか解説していきます。
混合ワクチンの種類
混合ワクチンはいくつか種類がありますが、何種類の病気を予防するのかで打つ種類を決定します。
知っておいて欲しい用語として、コアワクチンとノンコアワクチンという言葉があります。
コアワクチン
パルボウイルス感染症、ジステンパーウイルス感染症、アデノウイルス感染症(Ⅰ型/Ⅱ型)を予防するワクチンです。
これらの感染症は発症すると致死率も高く、予防が重要な病気です。
国内で混合ワクチンを接種した場合、基本的に含まれています。
接種間隔は成犬であれば3年以上空けて再接種で良いとされています。
ノンコアワクチン
コアワクチン以外のワクチンを指します。
日本で流通しているものであれば、パラインフルエンザウイルス感染症、コロナウイルス感染症、レプトスピラ感染症のワクチンがノンコアワクチンに当たります。
接種間隔は1年に1回です。
以下は当院にあるワクチンの解説です。
6種混合ワクチン
いわゆる普通の混合ワクチンです。
コアワクチン4種に加え、パラインフルとコロナのワクチンが含まれています。
8種混合ワクチン
6種混合ワクチンにレプトスピラワクチンが2種類組み合わさったワクチンです。
キャンプや川遊びなどにわんちゃんと一緒に行く場合、接種をおすすめします。
10種混合ワクチン
6種混合ワクチンにレプトスピラワクチンが4種類組み合わさったワクチンです。
国内で流通しているワクチンの中で、最も多くの種類のレプトスピラを予防できます。
当院の考えとしては、レプトスピラ予防が必要なのであれば、10種まで投与した方が良いと考えています。
レプトスピラ4種混合ワクチン
レプトスピラワクチンは初回の接種時のみ、1回のワクチン投与では免疫がつかないことが知られています。
なので、初回の接種時は1ヶ月間隔を空けて、レプトスピラのみのワクチンを接種します。
混合ワクチンは何回接種すべきか
いくつかのパターンに分けて以下で解説します。
子犬の場合
2、3、4ヶ月齢での計3回接種の後、1年後に混合ワクチンの接種を受けてください。
(厳密に言うと4ヶ月齢での接種の後、生後半年〜1年の接種が望ましいです。ただ、あまり浸透していないので、詳しくは診察時にご質問ください。)
それ以降は成犬と同様です。
成犬の場合
基本的には年1回の接種をおすすめします。
上記の通り、コアワクチンの効果は3年以上持つので、免疫のことだけ考えると特に接種の必要はないはずです。
ただ実際のところ、ペットホテルやトリミングサロンなど、動物関連の施設で年1回のワクチン接種を求められることが非常に多いです。
例えば、急にわんちゃんを預けなければならない場合、混合ワクチンを接種していないと、非常に困ったことになります。
なので当院では総合的に考え、年1回の接種をおすすめすることが多いです。
ただ、最近ではワクチン抗体価検査に理解のある施設も増えてきました。
健康にも気を使いたいし、利用施設がワクチン抗体価の結果で利用OKなら、ぜひ以下の方法でワクチンを接種してください。
成犬の場合(ワクチン抗体価測定を利用)
ワクチン抗体価測定では血液検査で免疫の量を計測できます。
なので、年に1回ワクチンの代わりに血液検査を行い、十分な免疫があればワクチン接種をスキップできます。
デメリットとしては、全ての施設がこの検査結果を受け入れてくれる訳ではない点、免疫が不十分であればワクチンを接種しなくてはならずお金がかかる点、ノンコアワクチンは計測できない点が挙げられます。
まとめ
狂犬病ワクチンは年に1回接種を行いましょう。
混合ワクチンは年に1回の接種で基本的にはOKです。
ただ、健康にしっかりと気を配りたい場合、年に1回のワクチン抗体価測定をおすすめします。