コラム

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膝蓋骨内方脱臼(パテラ)について

小型犬

膝蓋骨内方脱臼いわゆるパテラという病気をご存知でしょうか。

頻繁に診断される病気なので耳にすることも多いと思います。

ただ、考え方の違いなどから獣医師の間でも治療方針が分かれることが多く、結果的に飼い主の皆様が悩まれることも多い病気だと思っています。

今回は膝蓋骨内方脱臼について当院の方針を含めて解説します。

膝蓋骨内方脱臼とは膝蓋骨(膝のお皿)が内方(内側)に脱臼する病気です。

膝蓋骨は英語で「patella」と言い、日本国内では膝蓋骨内方脱臼の発生率が高いため、膝蓋骨内方脱臼のことを「パテラ」と呼ぶことが多いです。

実際には膝蓋骨脱臼には外方脱臼も存在するので、膝蓋骨内方脱臼をパテラと呼ぶと変なのですが、耳馴染みのある方も多いため当院でも「パテラ」と呼ぶことが多いです(本当は膝蓋骨内方脱臼medial patellar luxationを略してMPLと呼ぶのが正しいと思います)。 小型犬に発生することが多く、5頭に1頭はパテラというデータもあります。

膝蓋骨内方脱臼の原因は専門家の中でも議論があり、いまだに結論が出ていません。

大きく分けて「骨に問題がある派」と「筋肉に問題がある派」があり、考え方によって色々と治療の内容が変わる場合もあります。

膝蓋骨内方脱臼の症状は程度によって様々です。

多くみるのは一時的(数分程度)な後ろ足の挙上で、一時的に3本足で歩きその後普通に戻るというものです。

重症になると太ももの骨(大腿骨)に変形が生じ、歩行が困難になる場合もあります。

膝蓋骨内方脱臼は主に触診で診断します。

状態によりグレード1〜グレード4に分けることが一般的です。

また、骨や筋肉が大きくなる成長期にはグレードが変化することもよくあります。

膝蓋骨内方脱臼には主に内科治療と外科治療が存在します。

しかし、現時点で膝蓋骨内方脱臼の治療にはガイドラインのようなものは存在しません。

なので以下は当院の方針としてご理解いただけると幸いです。

手術により膝蓋骨が元の位置から動きにくくする治療です。

膝蓋骨自体を内科治療で外れなくすることは不可能なので、ある意味では外科治療こそが本当の治療とも言えます。

手術法は様々で、その子の状態、実施する先生の考えによりベストな治療を都度考えることになります。

当院では整形外科手術を行っていないため、適切な病院をご紹介させていただくことになります。

手術をおすすめする場合を一概に述べることは非常に難しいですが、当院では以下のような場合に手術をおすすめすることがあります。

⚫︎ グレード2以上の膝蓋骨内方脱臼であること

⚫︎ 手術費用をご納得いただけること

お薬により症状を緩和する治療です。

様々な治療がありますが、以下でいくつか治療法を紹介します。

A )サプリメント

骨関節の炎症を抑えるサプリメント、関節軟骨をサポートするサプリメントなど種類は色々あります。

なにを使うかは獣医師の考え方、犬の嗜好性などにより様々ですが、一般的な治療です。

B )内服薬

いわゆる消炎鎮痛薬がよく使用されます。

サプリメントと違い即効性があるため、今まさに症状が出ている場合によく使用します。良い薬がたくさんありますが、サプリメントと比較すると長期投与には向かないと考えています。

C )注射薬

膝蓋骨脱臼のような関節炎には様々な注射薬が使用されます。

こちらも獣医師の考え方により投与するお薬に違いがありますが、当院ではある程度症状はあるものの、投薬や手術が選択できない場合に注射薬を使用することがあります。

膝蓋骨内方脱臼いわゆるパテラは非常に一般的な病気です。

しかし症状や治療法が様々であり、飼い主の方が対応に迷われているような状況をよく目にします。

もしパテラで悩まれているようでしたら相談だけでも大丈夫なので一度ご相談ください。