子宮蓄膿症について

2025.06.02

イヌについて病気について

避妊手術をすると病気になりにくくなるという話を聞いたことがある方は多いと思います。

今回は避妊手術で予防できる子宮蓄膿症という病気について解説します。

子宮蓄膿症とは

子宮蓄膿症とは、子宮に膿が溜まる病気です。

子宮は外陰部（尿が出るところ）と繋がっており、何らかの原因により外陰部から菌が感染してしまうと子宮内膜炎という病気になります。

子宮内膜炎になると、体が治そうとして白血球という細胞を集め細菌と戦い、その結果子宮内に膿が溜まります。

高齢犬になると子宮蓄膿症になりやすくなり、未避妊犬の4頭に1頭は子宮蓄膿症になるとも言われています。

症状は重症度によって様々です。

基本的には元気・食欲がない、嘔吐する、水をいっぱい飲みよく尿をする（多飲多尿）などが子宮蓄膿症の症状とされています。

また、子宮内に溜まった膿が外陰部から出てくることもあります。

子宮蓄膿症では問診の他、血液検査、レントゲン検査、超音波検査を行い診断します。

以下で詳しく解説します。

子宮蓄膿症は様々な臓器に影響を与えるため、一通りの数値をチェックする必要があります。

子宮に炎症が起きる病気なので、白血球数の上昇やCRPの上昇が起こることが多いです。

また、細菌が出す毒素（エンドトキシン）により体がダメージを受けていると、腎数値が上昇することが多く、子宮蓄膿症のときに腎数値が高い子は危ないことが知られています。

腹部レントゲンでは大きくなった子宮が映ることがあります。

後述する治療（手術、点滴）には肺の状態が関係するため、胸のレントゲンも撮影することが多いです。

子宮内には本来液体がありませんが、子宮蓄膿症のときには液体（膿）が溜まります。

超音波検査で子宮内の液体をチェックし、診断します。

また、内科治療を行う際には卵巣の状態が重要になるため、卵巣のチェックも行います。

治療の基本は外科手術です。ただ、併発疾患が重篤で手術ができない、今後の繁殖を強く希望するなど特別な事情がある場合は内科治療を行います。

卵巣・子宮摘出術（避妊手術）を行います。

処理する血管や切る場所などは避妊手術と全く同じですが、健康な子宮では起こらない様々な異常に注意しながら手術する必要があります。

例えば子宮蓄膿症では血管が太くなっていることが多く、普段よりも止血に時間がかかります。また、子宮内に膿が溜まっているので、膿で健康な臓器が汚染されないように工夫することも重要です。

そのため通常の避妊手術よりも手間と時間がかかり、結果として手術費用も高くなることが多いです。

アグレプリストンという成分を注射する治療です。

アグレプリストンを注射すると子宮内の環境が変化し、膿を排出して状態が改善します。

投与方法は様々ですが例えば1、2、7日目に注射する方法や24時間間隔で2回投与する方法があります。

また、同時に抗生剤を投与し治療を行います。

最も大きな問題は卵巣・子宮は残っているため、再発してしまうケースが多いことです。

なので内科治療後に手術ができる状態になれば、積極的に外科手術をおすすめします。

また、卵巣嚢腫という病気がある場合も治療効果が安定しないと言われているため、外科手術をおすすめすることが多いです。

1番の予防方法は避妊手術を行うことです。

避妊手術は卵巣疾患の予防、乳腺腫瘍の予防にもつながるため、積極的にご検討ください。