コラム

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犬の急性膵炎について

犬では頻繁に嘔吐や下痢といった消化器症状を認めます。

その原因の1つとして急性膵炎が考えられます。

今回は急性膵炎について詳しく解説します。

犬の急性膵炎は元気消失、嘔吐、下痢、腹痛などを症状とする病気です。

しっかりと治療すれば良くなってくれますが、膵臓の壊死などを伴う重症例では死亡してしまうこともある病気です。

犬の急性膵炎の原因ははっきりとはわかっていません。

何らかの原因で膵臓内に存在する消化酵素が働いてしまい、その結果膵臓や周りの臓器に強い炎症を起こすと言われています。

また、高脂血症がリスクと考えられています。

そのため、高脂血症の発生が多いミニチュア・シュナウザーで膵炎の発生が多いと言われています。

その他、糖尿病、副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能低下症といった高脂血症を起こしやすい病気を持っていると、膵炎の発生率が高くなります。

急性膵炎は様々な検査を組み合わせ総合的に診断します。

中でも血液検査と画像検査が非常に重要です。

血液検査では白血球数の上昇や肝酵素値の上昇がよく見られます。

また、膵炎診断に非常に重要な検査項目としてリパーゼと呼ばれる数値があります。

動物用に開発されたキットもしくは血液検査機器で測定するリパーゼは、膵炎との関連が深く診断の助けになります。

反対に、動物用ではない機械でのリパーゼ測定や従来測定されていたアミラーゼという項目は、獣医療においては膵炎の診断に結びつかないとされています。

その他、CRPと呼ばれる数値が上昇していることも多く、CRPの低下を膵炎改善の指標とすることもあります。

血液検査のみで急性膵炎の診断を下すことは困難です。

例えば、リパーゼは膵炎以外の病気でも上昇してしまうため、「リパーゼの上昇」=「急性膵炎」とは言えないからです。

そのため、急性膵炎を疑う場合は超音波検査(エコー)を行うことが非常に多いです。

急性膵炎の場合腹部エコー検査で異常を認めることが多く、血液検査の所見と合わせて診断を下します。

犬の急性膵炎の治療には様々な方法があります。

基本的には内科治療がメインであり、以下で主な内科治療について解説します。

急性膵炎治療における治療のメインは点滴です。

膵炎が起きると嘔吐や下痢で水分が失われるほか、様々な原因で脱水が起こります。

体が脱水していると血液の流れが悪くなり、膵臓に対して十分な血液が行き渡らないため、改善が遅くなります。

そのため、急性膵炎の場合は十分な点滴を行うことが非常に重要です。

急性膵炎の症状が軽い場合には通院での点滴も可能ですが、重症の場合は入院での治療をおすすめします。

急性膵炎の発生時は、お腹が非常に痛くなることが知られています。

そのため、かなりしっかりとした鎮痛薬を使用しなければいけません。

入院でしか使えないお薬もあれば、通院で使用可能なお薬もあるので、状況に応じて使い分けます。

急性膵炎では高い確率で嘔吐してしまいます。

嘔吐が続くと脱水や誤嚥性肺炎に繋がるため、早急に対処をする必要があります。

現在はマロピタントというお薬が使用でき、強力な吐き気止めとして効果を発揮してくれます。

膵炎は膵臓の炎症反応なので、炎症反応を止めれば良いという考えで使用するお薬です。

代表的な抗炎症薬はステロイドで、昔は使用しない方が良いとされていましたが、近年では使用にメリットもあるという話が出てきています。

当院では状況に応じて使用しています。

また、膵炎の治療薬とされるお薬もいくつか出てきています。

新しいお薬でやや価格が高いことがデメリットですが、使用できる状況であれば積極的に使っていきたいお薬です。

昔は急性膵炎にはご飯をあげないのが一番という話があったそうです。

しかし、今は全くの反対で早く食事をあげたほうが良いとの意見が強くなっています。

急性膵炎の影響で食欲の低下や嘔吐があるはずなので、吐き気止めを使いつつ、食事の補助を行います。

急性膵炎の完全な予防は困難です。

そのため、定期的な健康診断で高脂血症を早期に発見し対応することで、急性膵炎になる可能性を減らしましょう。